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俺の人生は一言で言うと最悪だ。
原因は父方の祖母にそっくりなこの顔のせいである。
祖母は老若男女問わず惚れ惚れする美貌の持ち主で性格も文句無し、ナンパは勿論ストーカーなどが日常茶番時だったらしい。
子供の俺でも70過ぎの祖母を見て綺麗だと思ったため話は本当なのだろう。
俺は隔世遺伝で見事に祖母と瓜二つな顔で産まれた。
ついでに父の顔は祖父に似てイカツイ顔をしている。
普通なら綺麗に産まれた事に喜ぶが、俺は喜ぶことができなかった。
容赦が美しいと特だとか、ちやほやされて羨ましいと言われるが、実際はそうでもない。
何故なら俺は自分の顔のせいで不幸になっているからだ。
一段と容姿を気にする母は周りの人に俺と比較されては嫉妬して暴力を振るってきた。
学校では荒れた男が見た目だけで俺を掃き溜めに使ってくる。
最初は抵抗していたが、抵抗すればするほど暴力が酷くなるため次第に抵抗することを止めた。
ただ顔が整っているだけで何故こんな仕打ちを受けなければいけないのか。
もう心も体もボロボロの俺は、今日も掃き溜めに使われた後の重たい体で下校していた。
今日は一段と扱いが酷かったせいなのか・・・。
それとも生きることに疲れていたせいなのか分からなか俺は信号が赤になっている事に気が付かずに横断歩道を歩いていた。
そして、古い漫画の一コマのようにそこに大きなトラックが来て俺を跳ねてしまう。
あ・・・俺、跳ねられたのか。
宙に浮く中で俺は他人事のようにそう考えていた。
浮いている間はスローモーションのようにゆっくり感じる。
頭から地面に着きそうな時に俺は死の言葉が浮かんだ。
ああ・・・俺の人生って本当に最悪だった。
己の人生を呪いながら俺の視界は黒く染まっていった。
「・・・・ここどこ?」
俺こと櫻井 透(サクライ トオル)はトラックに跳ねられて人生を終止符を受けたはずだが、目の前に広がるのは自然に溢れる森のなかだった。
「いったいどうなっているんだよ・・・」
そしてこの世界で俺を待ち構えていたのは、相変わらずの最悪な人生だった。
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