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「大人しくしていろ! 皇帝陛下方の御前である」
まさかの城に来てしまった。
俺とヤタは城に着くなり兵士に説明一切なしで無理矢理歩かせられた。
王座っていうのか? その場所に着くと今度は勢いよく膝を尽かされた。
もっと丁寧にしろよ!
つか、皇帝方って何だよ?
おかしくないか?
普通に王は一人だ、三人も必要ないだろ!
内心でいろいろ悪態をついていると側近らしい人物が皇帝たちに説明をする。
「この者たちが山奥で身を潜めていたヤタガラスです。報告では森に住んでいるのは子供の女だけだと受けていたのですが、二羽も生き延びていたようです」
二羽って、人扱いすらないのかよ。
口を布で縛られてなかったら言い返しているところだが、喋れない俺は睨む事しかできなかった。
意味のない事をしていると青いマントを羽織った皇帝(略して青の皇帝)が側近に質問をする。
「こいつらの親はどうした?」
「女の方は隠していたことにより村人に刺殺されました。男の方は一切不明です」
「そうか」
青の皇帝は何かを考える素振りを見せながら俺を見てくる。
何だっていうんだよ。
俺と青の皇帝の睨み合いが続く中、黙っていた紫のマントの皇帝(紫の皇帝)と赤のマントの皇帝(赤の皇帝)が話し出した。
「別に素性なんてどうでもいいだろ、見つかり次第すべて消せばいい」
「でも勿体無いわぁ、見て!とても綺麗なヤタガラスよ。消すなんて惜しいと思わない?」
「ヤタガラスに勿体無いもないだろ」
消すとか消さないとか随分と物騒な話だな。
赤の皇帝の率直な考え方はマズいだろ。
オカマみたいだが紫の皇帝の方がまだ皇帝にふさわしいぞ。
「うっー! うっー!!」
流石に黙り続けていたら命が危険と判断した俺は訴える。
「こら! 大人しくしろ!」
「ううぅー!(できるかー!)」
「良い、口の布を外してやれ」
「良いのですか?」
「構わん。何か言いたいらしいからな」
青の皇帝の許可により兵士は俺の口を縛っている布を解く。
「ぷはっ、おい! 消すとか消さないとか二羽だの何だの言っているが、俺たちを何だと思っているんだよ! 俺たちだって人間だし殺される理由なんてない!」
「お前らは人間じゃねぇ、ヤタガラスだ。恨むならヤタガラスとして産まれたテメェを恨みな」
「さっきから言っているヤタガラスって何だよ? 俺には透って名前がちゃんとあるんだよ!」
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