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ある1人の男が見上げた黒い空に
1つ また1つと 煌めいた希望が輝く
「俺は無力だ…」
男は そう言うと
右手に持っていた煙草に火を付けた
「……フゥ~…」
自分を落ち着かせる様に
煙草を吸いながら
左手の缶珈琲を口に運ぶ
「あぁ…不味い」
男は そう言いながら
また黒い空を見上げる
ー …1時間後… ー
男は 愛車のバイクに跨がり
エンジンをかける
それは男の苦悩を歌い上げる様に
寂しさを紛らわす様に
夜の静寂に響かせながら
・
・
・
・
暫くバイクを走らせていると
1人の少女に瞳が止まる
身体的特徴から言うと
10歳前後だろうか…?
紅と銀のオッドアイ 髪は腰まであり
胸には大きな十字架
…そのまま走り去る事も出来たが
男は何か引っ掛かるものがあり
その少女に声を掛けた
「お前…此処で何をしている?」
「……………」
少女は何も答えない
もう1度男は声を掛ける
「お前は誰だ?此処で何をしている?」
「……無くしたの」
少女は答える
「何を無くした?」
男が聞くと 少女は
「私は… 凛(リン)」
「凛… お前は何を無くした?」
「………心」
「心?」
「…そう……心…」
男は 何となくその少女を
…放っておく事が出来ず
「俺と来るか?」
「………(コクン)」
少女は頷き 男はその少女を
バイクの後ろに乗せ 再び走らせた
また夜の静寂にバイクが歌い出す
[男と凛]
2人の物語の幕開けの様に…
ー 序章 完 ー
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