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家族という存在は、家族の誰かが隠しているつもりの事柄を敢えてそれに気付かぬ振りをする名人揃いだと言う。
尤も古今東西それが全ての家庭に当てはまるとは限らないのだが。
少なくとも今、○○町にある阪急ホテルのロビーに寛ぐ4名の人物に関して言えば、先述の例に該当する人々であると言えた。
「疾風丸様の御意志故に黙ってはいたが…
ひどいぞ小林と一式ーッ!
どこまで拙者を除け者に致せば…」
愛刀備前長船兼光の柄に、布袋越しにとはいえ手をかけながら老紳士…
川西平八郎利益。
ここは当然、平八郎の右に座る中島小十郎真之の出番である。
「まあまあ兄上、拙者の教え子とお孫さんの御前ですぞ」
平八郎とは対照的に落ち着き払った態度にて真之。
あの嵐陸コンビですら戦慄を覚える平八郎の癖も、真之にしてみれば時々顔を出す従兄の少し困った癖に過ぎないらしい。
やがて真之の前に座る、二人よりも少し年下に見える老紳士が、反射的に孫娘を庇いつつ口を開いた。
そんな祖父の落ち着き払った態度を、孫娘の園崎莉奈(そのざき=りな)は平八郎の剣幕に若干引きつつも祖父に尊敬の眼差しを注いでいる。
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