第一章

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 「いいのかよ、一人で直して。手伝おうか」  「大丈夫よ。直したら二人でチェックよろしくね」  日高は笑顔で答えた。性格はきついけど意外と可愛かった。  週が明けて火曜日の放課後、日高が直した脚本を大沢とチェックした。日高は用事があって先に帰った。教室の暑さは少しだけましになった。  「なあ、日高っていつもああなのか」  「まあね。でも明るいからいいじゃない」  「お前もあっさりしているな」  「そう?君の方が濃いかもね」  「えっそうか?普通だと思っているけどなあ」  そんな風に思われているのが意外だった。  「ここ進学校だし、みんなもう受験の事で頭がいっぱいだからね。塾ではみんなピリピリしているよ」  「そうなんだ。塾通いも大変だな」  「みんな学校では無難に過ごそうとしている。文化祭の打ち合わせの時も淡々としていただろう?適当に参加すればいいと思っているんだ」  「それは俺もだけどな」  僕は他人事には思えず苦笑いした。  「出来た。特に問題なかったよ」  「ああ、こっちもだ。じゃあ帰るか」  僕と大沢は一緒に教室を出た。  次の日、日高にチェックOKの報告をすると、日高はそのまま遠山に脚本を渡した。  これでひとまず僕たちの作業は終わった。  「佐藤君、お疲れ」  日高が笑顔で話しかけてきた。  「日高もお疲れ。一人で直して大変だったんじゃないか」  「うん、大丈夫。実は今度、脚本のコンテストに応募しようと思っていたし丁度いい練習になったわ」  「へえ、すごいな」  日高の返事に僕は素直に驚いた。  「まだ文章を書くのが苦手だけどね。それはこれから勉強していくつもり」  「そうなんだ。コンテスト受かるといいな」  「ありがとう」  日高の笑顔は今までと違って力の抜けた素直な表情に見えた。  みんな表面では淡々としているけど色々な夢や悩みがあって、僕もその中の一人だと思うと何となく一人じゃないんだと思えた。  教室にはもう夏の暑さはなかった。
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