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「やめる!やめるから!魔法解くから!」
小悪魔は叫んで、両手を組み、なにやら呪文を唱えはじめた。しかし、
「問答無用!」
優斗が覆いかぶさった。
一分後。へなへなとステージにへたりこむ小悪魔。
椅子に座っていた観客が意識を取り戻し、ホールからゆっくりとでていきはじめた。 魔法が解けたのだろうか?外の様子をみるべく俺たちも外へでた。
(小悪魔の事が少々気がかりであったが)
外へ出てみると、先ほどの混沌は終結し、仮装した連中は三々五々公園の外へでていた。
なんでこんな恰好しているんだと不思議な顔をしながら。
この様子だと教授たちも大学に戻っているだろう。ほっと胸を撫でおろす。
「おれたちも帰るか」
「うん」
優斗がうなずく。
色々と気がかりなことがあるが、もう今日は疲れた。
帰る途中。ワインが湧いていた池を通ったが、すでに亀と鯉が泳いでいるいつもの池に戻っていた。もしかしてあのワインの正体は……。
けっこうやばくないかと思ったが、腹痛になるのは明日のオレであって今日のオレではないと考えるのをやめた。
翌日。
「おはよー。にーちん!」
近所のコンビニに行こうと外へ出たオレを優斗が追いかけてきた。
腕に絡みつく優斗。
「くっつくなよ」
「いいじゃん。いいじゃん。キスまでした仲なんだから」
すれ違ったおばさんがじろりとこちらをみた。
「大きな声でいうな聞こえんだろ」
「いいじゃん。いいじゃん」
面倒なことになった。コンビニの横に止められた引っ越しのトラックをみて、オレも真剣に引っ越しを検討する。ってあれ?
「こんなところに家なんてあったか?」
確か。空き地になっていたと思うのだけど。
「なかったと思うけど」
優斗もそういって、怪訝な表情で豪邸を見上げている。
その後。あの小悪魔がこの家に越してきくるのだが、それはまた別の話。
またいつかの機会に話そうかな。
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