第1章

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「なにこれ……」  夕方。独り暮らししているマンションからでてみると、通行人が全員仮装していた。   今日はハロウィンだし。仮装している人がいてもそんなにおかしいという訳ではないのだけど、それはあくまで栄とかの大都市の話。  JRの鶴舞駅の近所。名古屋の中央といっても閑静な住宅街ではそんな連中まず見かけない。  なのにどういう訳か。皆クオリティの高い衣装を着て、駅へと向かっている。 「あれはから揚げ屋のおばちゃん?」   見覚えのある人物が横切る。  普段から化粧っ気もないような人が今日はシンデレラがダークサイドに堕ちたようなイカした衣装で町を闊歩している。ドレスは股の所がスパッと切れていて生足が剥き出しなっている。  おばちゃん。意外といい身体してたんだなと自分でも鼻の穴が広がるのが分かった。たしかまだ三十代だったよな。  そんなことを考えていたら。背後から「にーちん!」と声がした。  振り返ってみると隣に住んでいる優斗だった。 「なにその恰好?」 「お前こそなんだよ?」  と声を掛け合う。自動ドアがオレと優斗と姿を映し出す。  二人ともドラキュラの恰好をしているじゃないか。    町が大変なのはわかったけれどお前誰だよって?  オレの名前は越野という。近所のM工業大学に通う18才だ。  隣にいるガキは。隣で母親と二人暮らししている。小学6年生の優斗。  このマンションに越してきてからなにかと二人でつるんでいる。今日も優斗の母親が夜勤(近くのN大学病院で医師をしている)なので二人でボンカレーでも食べようとしていたところ。何故か急に外に出なくてはいけないという脅迫概念にも似た使命感に襲われ。あつあつのカレーを放置して外に出た。  そして今。二人で仮装行列に加わり道の真ん中を歩いている。(幸いなことに自動車の姿はみえない) 「なあどうして足が勝手に動くと思う?」 「そんなのわからないよ。にーちんこそ大学生でしょ?なんかわからないの」 「いや。さっぱり」  いつもジャンプを立ち読みしているコンビニを通り過ぎた。  行列は道の奥にある鶴舞公園の入り口までつづいており。木々で暗くなっている公園内に吸い込まれていっている。  嫌な気配だ。  コンビニを通り越し。通っている大学がみえる。  四階の一番奥の明かりが光っている。  たしかあそこは……。と考えていると袖が誰かに引っ張られた。
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