妄想教師の憂鬱 #2

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  *** 「ふわぁ……」 午後の心地よい日差しが窓から降り注ぎ、私の睡魔を囃し立てる。 昨日の寝不足が祟ったのか、思わず大きな欠伸をしてしまった私に、隣にいた大場先生が大きな口を開けて笑いながら話しかけてきた。 「あっはっは! 後藤先生。寝不足ですか?」 体育教師らしいガッシリとした身体から放たれる野太い声は、私をすぐに覚醒させてくれた。 「えっ? あ、すみません。少し……」 いけないいけない。 私としたことが、学校で欠伸をしてしまうなんて。 「いつも真面目な後藤先生でも、たまにはこういうこともあるんですねえ。貴重なシーンを見れましたよ。ギャップ萌えって言うんですか? いやあ得しましたなあ」 「もう、いやですわ。恥ずかしい」 真面目……。そう。私はこの学校では真面目な教師で通っている。 だから絶対にバレてはいけないのだ。 ――実は私が、同人作家であるという事実だけは。 私、〝後藤うさぎ〟は〝古都うにゃぎ〟というペンネームで、同人誌を描いている。 内容は男性向けアダルトから腐系まで、多岐にわたる。 私は男性同士の絡みも好きだし、虐められる女の子も好きだ。 勿論ラブラブも好きだし、何より乳が好きだ。 私は俗に言う貧乳のため、巨乳には憧れがある。 あの柔らかい膨らみはどんな感触なのだろう。 ああ、やわやわしたいふにふにしたいばいんばいーんしたいいいい! そんな欲望をぶちまけて描いた乳同人は、びっくりするほど売れたものだった。 それにしても、さすがに昨日はまずかった。 次のイベントに出す作品の進みが芳しくなかったとはいえ、夜中まで執筆なんてするもんじゃない。 こんな私でも、学校では真面目な国語教師。 真面目ぶるというのも疲れるのだが、国語教師は私の夢だった職業だ。 公私混同せず、きちんとこなしてみせなければならないのだ。 そう思い、私は「よしっ!」と声をあげ、気合いを入れて立ち上がる。 「では、大場先生。私は少し調べ物をしてきますね」 「いや、疲れてらっしゃるのに熱心なことですなあ。頑張って下さい」 笑顔の大場先生に会釈をして、私は職員室を出た。  
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