25人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「ふう……。ごめんなさいね、大場先生」
辺りに誰も居ないのを確認して、私は廊下で一人ごちる。
大場先生は、どうやら私に好意を持っているらしい。
前に酔った勢いで漏らしたという噂を聞いただけだが、彼の態度を見ていれば、いくらそういうのに鈍感な私でも流石に気づく。
そして、その噂を知るものは、口々にこう言うのだ。
「付き合ってしまえばどうですか」
と。
確かに私ももう25。
結婚を考えてもいい年頃だ。
大場先生は27歳。
いわゆる体育会系だが、爽やかで話しやすく、生徒からも人気がある。
いつも地味なスーツを着て、メガネをかけて、髪も黒のショートヘア、おまけに胸もないし色気も面白みも無い私をどうして好きになったのかは知らないが、彼であれば安心して一緒に家庭を築けるだろうと、私も思う。
でも……でもダメなの!
だって……だって……。
私はどうしても 三次元の男には興味が沸かないのだから!
やはり、男は二次元に限る。
いや、女の子だって二次元の方が良いに決まってる。
だって考えても見てほしい。
三次元の人間は文句も言うし、汚いこともするし、臭うし、気も使う。
その点、二次元は違う。
私の言うことを何でも聞いてくれるし、排泄だって必要な時(プレイ的な意味で)以外は行わない。
気も使う必要も無いし、匂わない。
そう、匂いだよ匂い!
大場先生が体育の授業を終えた後の、あの何とも言えないツンとくる匂いが許せない。
この前は8×4(エイトフォー)の匂いが漂っていたが、それはそれで別の意味で嫌だった。
しかし、私の書く二次元キャラ達は違う。
絵を見るだけで、石鹸の香りが漂ってくる気がする。
汗の匂いだって、私にかかれば薔薇の香りに変わる。
薔薇……薔薇……アッー!
……まあ兎に角、私は三次元の人間には興味が無いのだ。
最初のコメントを投稿しよう!