9人が本棚に入れています
本棚に追加
「夕姫ぃぃぃ!」
部室を飛び出した俺は、そのまま迷わず女子トイレに飛び込んだ。
「夕姫! どこだ夕姫!」
トイレに入れば、鍵のかかった個室が一つ確認できた。
もしやあの中に夕姫が……っ!
「夕姫! ここにいるのか! 夕姫ッッ!」
「ちょ……な、なんなのよ!? ここ女子トイレよ!? とっとと出ていきなさいよ!」
個室の中から聞こえた夕姫の声は、まちがいなく俺を拒絶していた。
これは確かに……涼子の時と同じだ。
涼子も俺を拒絶し、自らの命を絶とうとしていた。
――このままでは、夕姫の命が危ない!!
「夕姫! 待ってろ! 今行くからな!」
「は、はあっ!? ちょっ、アンタなに意味の分からないことを……」
俺を遠ざけようとする夕姫の言葉は気にしない。
このまま放って置けば、夕姫は個室の中で何やら混ぜるな危険的な物を混ぜたり、トイレットペーパーで首を吊ったり、便器の水に顔を押し付けたりして命を絶つだろう。
それだけは、避けなければならない。
「夕姫……! 夕姫……!」
「ちょ……馬鹿、来るなあっ!」
個室の扉をよじ上る俺を、夕姫が必死で止めようとする。
個室の扉と天井の間には俺が通れるくらいの隙間がある。
――夕姫、大丈夫だ。俺は絶対にお前を死なせはしない。
「夕姫ィィィィ!」
「イヤアアアアアア!」
そして俺は、ついに夕姫が待つ個室へと飛び込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!