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「おはようございます」
ただ雨が降っているのを除けば、変わらぬ朝だった。
広報チームに出社すると、玉城さんと三科さんがかすかに疲れた顔で挨拶を返してきた。
改めて2人の前に立ち、謝罪する。
「昨日は、取り乱して本当に申し訳ありませんでした。もう大丈夫です」
「そっか、よかったわ」
「無事終ったよ。いちおう今日の午後、印刷所には出向くけれどね」
「そうですか、本当にすみませんでした」
「で、涼さんには、今日はカサノヴァの出演打ち合わせにマネージャーとして同行してほしいの。お願いできるかしら?」
「はい」
昨日の今日で廣瀬さんに顔を合わせる。
そのことが苦痛ではないけれど、どういう顔をしようかとかすかにため息をつく。
「たぶん、もうすぐここに廣瀬くんが顔を出すわ」
「あの、佳也くんと光流くんは?」
「2人は別行動。リーダーの廣瀬くんだけで充分でしょう。お願いね」
「はい」
笑顔をつくって、二人に頭を下げるとデスクに戻る。
坂崎さんが心配そうな顔をしているのが分かり、改めて坂崎さんのところに向かう。
「涼さん、少し息抜き、つきあってくれ」
朝っぱらから息抜きもないけれど、カフェスペースに向かう坂崎さんについていく。
「おごるよ。カフェラテでよかったか?」
そう言いながら坂崎さんが、私に自販機からのドリンクを手渡してくれる。
「すみません、お気遣いいただいて」
「いや。こちらこそタイミング悪い時に見せて申し訳なかった。あれから司さんと連絡とったりは?」
「いえ、昨日の今日ですし、ちょっと落ち着こうと思って」
司さんにまで責めてしまいそうな自分がいた。
昨日は、それで悶々として、抑えるのに必死だった。
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