大きくなっていく亀裂

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「すっごい仲、いいんだ? 音楽のことじゃアンジェほどトーイのこと理解できる相手いないもんね」 「何言ってんだよ…。オレのことは一番涼が理解してるじゃん…」 「私? 私は理解なんてできてないよ。一哉くんのことは少しは理解できたかもって思ったけど、トーイがしていることのほんの少しも分かっていない。分かるふりしてついていってるだけだよ。必死で。いつも目の前の仕事をこなして、トーイがいつだって最高のパフォーマンスできるようにサポートするだけだよ」 「それはすごいありがたいって思ってる。でも理解してくれてるよ。いつだってオレのこと一番に応援してくれるのは、涼じゃん」 「でも、アンジェといると刺激的でしょう? 音楽のこと、深いところで分かり合えて、楽しいでしょう?」 「…そんなこと、ねーよ」 一哉くんが一瞬つまって、弱く否定する。 否定するほど、私はイライラしていた。 一哉くんに謝罪を強いているのか、それとも泣いて私だけと言ってほしいのか、自分でもよくわからなかった。 「アンジェは友達だし、それ以上の想いはない。それ、分かってくんねーの?」 何か、自然に切れたような気がした。 「分かってくれですって? こっちは死ぬほど不安になっていたのに。あんな写真、どう考えても恋人同士のするようなことじゃない。なんであんなに腕組んでるの。なんで私と…」 ようやくそこまで言って分かった。 許せなかったこと。 私と幾度も抱き合ったあの部屋は、私と一哉くんの間の二人だけのものだと思っていた。 その部屋に、彼女をあげた、そのことが私にとってはとてつもない裏切りだった。 「なんで、部屋にあげたのよ? なんで2人だけの場所だったのに、他の女の子入れたのよ?」 「入れたって、そんなリビングぐらいだし、怒るほどの時間過ごしてねーよ」 「そういう時間や場所の問題じゃないの。なんで? 二人だけの空間じゃなかったの?」 「仕方ない場合だってあるだろ」
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