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そのまま泣きそうで、私は自分勝手なワガママも忘れて、唇を噛み締めた。
話をしていたら、いろんな言葉で一哉くんを傷つけてしまいそうだった。
一哉くんの険しくなっていく表情も、これ以上油を注ぐ前に、アプリを終了させるべきだった。
「涼」
「ごめん、これ以上話したくない」
「涼!?」
「切るね」
「涼、ちょ、ちょっと待てよ! 本当にアンジェとは」
一哉くんが慌てたふうにしたのも構わず、アプリを切る。
そしてそのまま私はベッドに突っ伏した。
自分の中の名付けられないほどに荒れ狂った感情が、一哉くんをこれ以上傷つける前に。
嫉妬だと分かっている。
アンジェに対してのもので、一哉くんにあれほどきつく当たることはない。
分かっていたのに、許せなかった。
あの壁やいろんなところに愛を囁いた言葉のある部屋。
あそこは、私にとって、この部屋と同じくらい2人だけの空間だった。
そこによそものを入れた、いや、違う。
アンジェを入れたのが許せなかった。
たぶん、アンジェはあの写真から推測するに、一哉くんのことを好きになってる。
だいたい出会いの時だって、いの一番に抱きついていった。
それが分かるだけに、よけいささくれだった。
私には、アンジェに叶うものは何一つ、何一つなかった。
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