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ホテルについて、ようやく一息をつく。
アンジェは旅慣れているのか、ホテルの窓から下を面白そうに眺めている。
アンジェとマネージャーは何か話しをすると、三科さんに近づいた。
「ミニアルバムについて、少し話しをしてくる。坂崎さんも一緒にということだから、ちょっとロビーで打ち合わせてくる。ほんの数十分だから、アンジェのこと頼んでいいか?」
「分かりました。坂崎さん、もう向かってるんですか?」
「うん、下にもう着いてる」
さすが仕事の速い坂崎さんだ、すでに打ち合わせの準備に入っているという。
「じゃあ、アンジェ、何か希望ある?」
三科さんとアンジェのマネージャー2人をホテルの部屋から見送りながら、英語で話しかけると、ペディキュアを直し始めていたアンジェが顔をあげた。
その目が挑戦的に光った気がしたのは気のせいだと思うようにしながら、正直内心では息がつまりそうだった。
「何もないわ。リョウって仕事できるのね、すべて事前の要望通り、水も食べ物もすべてパーフェクトよ」
アンジェは軽く腕をのばすようにして、冷蔵庫をのぞきこむ。
「何、言ってるの。このくらいできないとクビにされるわ」
そう言って笑うと、アンジェは小さく笑いながら、お寿司をとりだした。
「今回の滞在じゃ観光する時間もないじゃない。だからせめてお寿司くらい食べてみたかったの。一哉が一度食べてみてごらんって」
また、一哉と呼んでいる。
出会った時は確かにトーイと呼んでいたのに。
これ以上一緒にいたくなかった。
「じゃあ、少し私、外に出ているわね」
そうアンジェに言うと、アンジェは軽く頭を振って引き止めた。
「個人的に希望があるの。ね、リョウ、聞いてくれる?」
「え、個人的…?」
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