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静かに微笑しているサオリさんに何も言えなかった。
問いかけられた言葉の意味の奥に、私の覚悟への眼差しがある。
小さく張り詰めている空気を破るように息を吐いた。
まるでエドに言われてるみたいだった。
「偉そうにごめんなさいね、涼さんが危惧しているように、世界で勝負するのが簡単じゃないのは、エドを見てると分かってしまうから」
「はい…」
「まあ私自身、こう思えるようになったのも最近だけれど。エドは、今でも音楽が第一。それでも、私には、そういうエドとエドのつくる音楽をひっくるめて好きなのよ。涼さんは、トーイくんに、どうなってほしい? トーイくんとどうなっていきたい?」
トーイとどうなりたいか。
一哉くんとどうなりたいか。
単に一緒にいられたら、なんて無責任な話はできない。
私はまるで鏡のように静かなサオリさんの視線に、そっと目を伏せた。
答えは、たぶんもう出ていた。
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