さようならは言わないで

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地球には、何十万、何十億、何十兆と人がいる。 その中で、たった一人の人を見つけて、その人を全身全霊で愛せる、というのは、本当に幸せなことで。 今までいろんな人の心と体を通り過ぎてきたけれど、最後の一人にたどり着くのは本当に偶然が偶然を呼んだ奇跡。 でも私は出会えた。 この世界でそのラストの一人に。 遠野一哉という19歳に。 これが最後だと思った相手もいた。 愛し尽くしてくれる相手もいた。 運命だと思った相手もいた。 でも今、彼らのそばに、私はいない。 私のそばにいるのは、遠野一哉ひとり。 ただそばにいられればいい、といつも一哉くんは言っていた。 そんなシンプルさだけで満足できる相手がいるなんて、私は一哉くんに出会うまで知らなかった。 欲望の欲するところを知らないその真理がありながら、一哉くんはいつも、そばにいてと祈りのように願っていた。 いろんな過去を乗り越えて、だからこそ本当に好きな相手にはそばにいてほしいと、それだけで充分だと言った一哉くんの笑顔が、切実な瞳が思い浮かぶ。 しかも一度流れた命を、再びこの身に宿せた奇跡がここにある。 ならば、私はずっとそばにいることを誓いたい。 例え、一哉くんが今のままでも、この先予期せずに環境が変わったとしても、私の中には、たった一つの真実。 そばにいたい。 ずっとずっと、私の気持ちは変わらないから、だから。 だから、私のそばにいて。 待っているから。 待ち続けるから。 だから、どうか、永遠に君のそばに。
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