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そして楽屋から通路を手をつなぎながら、歩いていく。
一哉くんはその間も、声の調子を整えるように何度となく発声している。
ステージの袖には、すでに陣さんたちがスタンバイしていた。
「お、涼ちゃん!」
「ごっつきれいやん、なんかええな、ツアー初日に花嫁さんって。縁起ええわ」
「おキレイですよ」
私は照れまくりながら、お礼を言う。
通路をゆくスタッフも英語で声をかけてくれた。
皆が一哉くんの復帰を、そして私との結婚を祝福していた。
一哉くんは軽くストレッチをすると、司さんと陣さんたちの元にいき、手を出す。
「ぜってー成功させる!」
「おう!」
重ね合った手がかけ声とともに離れる。
それと同時に、陣さん、セリさん、Hさんがステージにあがっていく。
ものすごい歓声があがる。
聴こえてくる。
殲滅ロザリオを迎える世界の称賛が。
司さんが私に頷いてステージに出ていった。
ステージでそれぞれが楽器を肩にかけたり、準備をし始める。
一哉くんは私の方に寄ってくると、軽く唇を重ねた。
「行ってくる」
「うん、頑張って」
私はにっこり笑顔になると、ふいに「あ」と声をあげた。
「赤ちゃんも、行ってらっしゃいだって」
「どれ」
一哉くんがウェディングドレスの上から耳を当てる。
「すっげ動いてる」
「頑張ってって言ってるんだよ」
私はにこにこと赤ちゃんの声を代弁すると、一哉くんも私を見上げて嬉しそうに笑った。
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