突きつけられた壁の向こう

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「坂崎さんとこでしっかり勉強してきてください。その頃にはトーイだって今より成長してるし、そん時は、またうちが引き抜きますから。トーイの専属マネとして、いっちゃんいい待遇で!」 意地もあるのか、悔し紛れな丹野さんに、私は改めてお礼を言った。 自分の身の振り方も決まって、後は部屋の自分のものを片付けたり、お世話になったスタッフに礼を言ったり、やるべきことはまだ残っている。 「そういや、来週ホームパーティーらしいですよね。皆行くんすか?」 「まあ招待されてっからなあ。丹野ちゃんも来いよ」 「涼さんもですよね?」 「うーん、難しいかな。帰国の準備もあるし、ワールドミュージックジャパンの就業関係もあるしね」 「じゃあ、近いうちに送別会しましょうか」 司さんがにこりと笑う。 こういうタイミングを捕まえて親睦を深めるのがうまい。 事あるごとにそばで共にしてきた仲間と離れるのは、やはり淋しかった。
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