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玉城さんが言いよどんでから、私を静かに正面から見た。
「もし何かチェック漏れでもしたら、せっかくの殲滅ロザリオの仕事も台無しなの。分かる、私が言いたいこと」
さすがに女性同士、玉城さんは先輩上司として、はっきり「困る」と告げた。
「最後の追い込みなの、ここは私たちに任せて帰りなさい」
はっきりした物言いに、私はそれ以上何も言えずに俯いた。
「いい、お願いしたいことがあるの。カサノヴァのメンツはとりあえず今日はもう仕事終わりだから、送っていって。ついでに、あなたも直帰なさい」
「は、い」
上司命令としての明確な指示に、私は小さく頷くと、坂崎さんと三科さんに頭を下げた。
「申し訳、ありません」
「いや、こちらこそタイミングが悪かった。すまなかった。でも玉城の言う通り、なんかミスが起きたら怖い。ここは玉城に手伝ってもらうから今日は帰れ」
「はい」
「大丈夫です」と言えなかった。
社会人ならば、この仕事を続けていくプロならば、動揺を見せずにしっかり最後まで仕事をすべきだ。
それができない。
こんなに弱かったんだろうかと思うほどに、手につかなかった。
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