大きくなっていく亀裂

1/12
570人が本棚に入れています
本棚に追加
/230ページ

大きくなっていく亀裂

その日の夜のことだった。 どしゃぶりになった窓の向こうを眺めているとSNSに通知が入った。 一哉くんだった。 スカイプで繋がろうという連絡に、私はノートパソコンのアプリを起動した。 そこには、かすかに嬉しそうにしながら、それでもどこか素直にそれをあらわしきれない一哉くんが、画面の向こうにいた。 「久しぶり、涼」 「久しぶり…」 「その、なんていうか、さ。連絡とりあわないって言ってたんだけど、それでも…」 「それでも連絡とりあわないとならない事情でもできた?」 自分でも思ったよりきつい言葉が出たのに驚く。 驚いて、でもそれを引っ込めることができない。 一哉くんは、一瞬息を飲んだみたいだった。 でも私の中で、久しぶりに会うのだから笑顔で話をしたいのに、どこか素直になれない自分がいた。 抑えようとすればするほど、声が震えそうになる。 「あ、もしかして、…アンジェとのパパラッチのこと?」 軽く、一哉くんは笑い飛ばすように、一哉くんから口火を切った。 「参っちゃうよな、単に…アンジェとコラボするからその曲の構想練ったり、歌詞を作ってただけなんだけどな」 カチンときた。 こっちはいろいろ疑心暗鬼になっていたというのに、その他人事のように言うその不誠実さ。 ふつふつと胸の中で嫌な音をたてるものがある。 触れたら火傷しそうなほど、自分で自分が制御できなくなりそうだった。 「で、それであの部屋から腕くんで出てくるんだ? いちゃいちゃする必要あったんだ?」 「だからさ、あれはアンジェなりのスキンシップっつうか、親愛の表れっつーか…」 一哉くんの声が少し弱くなる。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!