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大きくなっていく亀裂
その日の夜のことだった。
どしゃぶりになった窓の向こうを眺めているとSNSに通知が入った。
一哉くんだった。
スカイプで繋がろうという連絡に、私はノートパソコンのアプリを起動した。
そこには、かすかに嬉しそうにしながら、それでもどこか素直にそれをあらわしきれない一哉くんが、画面の向こうにいた。
「久しぶり、涼」
「久しぶり…」
「その、なんていうか、さ。連絡とりあわないって言ってたんだけど、それでも…」
「それでも連絡とりあわないとならない事情でもできた?」
自分でも思ったよりきつい言葉が出たのに驚く。
驚いて、でもそれを引っ込めることができない。
一哉くんは、一瞬息を飲んだみたいだった。
でも私の中で、久しぶりに会うのだから笑顔で話をしたいのに、どこか素直になれない自分がいた。
抑えようとすればするほど、声が震えそうになる。
「あ、もしかして、…アンジェとのパパラッチのこと?」
軽く、一哉くんは笑い飛ばすように、一哉くんから口火を切った。
「参っちゃうよな、単に…アンジェとコラボするからその曲の構想練ったり、歌詞を作ってただけなんだけどな」
カチンときた。
こっちはいろいろ疑心暗鬼になっていたというのに、その他人事のように言うその不誠実さ。
ふつふつと胸の中で嫌な音をたてるものがある。
触れたら火傷しそうなほど、自分で自分が制御できなくなりそうだった。
「で、それであの部屋から腕くんで出てくるんだ? いちゃいちゃする必要あったんだ?」
「だからさ、あれはアンジェなりのスキンシップっつうか、親愛の表れっつーか…」
一哉くんの声が少し弱くなる。
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