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「うそ……」
放心状態の私の手からバラの花束が滑り落ちる。
だって、コイツはここに居ちゃイケナイ男だったから……
「なななな、なんで?なんでアンタがここに居るの?」
「なんでって、こっちに戻って来たから、親父さんに挨拶に来たんだよ」
平然とそう言い放った男こそ、私を憂鬱にしていた張本人。唯一、私を"ホタル"と呼ぶ男。斎藤一輝(さいとう いっき)だ。
「はぁ?一輝とはもう縁切ったんだよ?挨拶なんてしに来なくていいよ!」
取り乱す私とは対照的に、一輝はシラ~っとした顔で言う。
「ホタルとは縁が切れても、親父さんとの縁は継続中だ。俺は親父さんに会いに来たんだよ」
「なっ……何バカな事言ってんのよ!いいから、もう帰って!」
すると、すっかり酔っぱらいヘラヘラ笑っていた父親が、とんでもない事を言い出した。
「蛍子、一輝はこっちに戻って来たばかりで住むとこもまだ決まってないんだって~だからさ、ここに住んでもらおうと思ってな」
一輝が……この家に住む?
「ちょ……このクソ親父!勝手に決めないでよ!なんで離婚した男と同居しなきゃいけないの?」
―――そう、一輝は元旦那。私、バツ1なんです……
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