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プロポーズしてくれた彼に、どうしても言えなかったのは、正しくソレ。離婚経験がある私を、エリートの彼が受け入れてくれるかが心配だったんだ。だからカミングアウト出来なかった。
そう、あれは、私が18歳の時―――
若気の至りで一輝と結婚し、僅か1年で離婚。そんな事になったのも、全てこのクソ親父のせい。父親が勝手に私達の結婚を決めてしまったから……
もちろん、父親に言われたからって、好きでもない男と結婚なんかしない。当時の私はまだ幼くて、父親が薦める大学生の一輝がとても素敵に見えた。今思えば、私は父親にマインドコントロールされてたのかもしれない。
「なぁ、蛍子、お前達が別れて丁度10年だ。キリもいい事だし、再婚なんてどうだ?」
「はぁ~?なんで離婚10年を記念して一輝と再婚しなきゃいけないの?あいにくだけど、私、今日プロポーズされたの。だから一輝とは……無理!」
「プ、プロポーズだと?どこのどいつにプロポーズされたんだ?」
今までのほほんとしてた父親の態度が一変。鬼の様な形相で私に迫ってくる。
「分かってるだろうが、我が家は由緒正しい武家の血筋。蛍子はたったひとりの後継ぎだ。嫁には出せんぞ!」
ったく……またこれだ。父親のこの御先祖様愛が私の人生を狂わせた……
「大昔はどうか知らないけど、今はただの惣菜屋じゃない。後継ぎとか婿養子だとか……もう、うんざり!私はお嫁に行きます!」
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