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「これから我らの親友であるAのために、告白方法提案の会を結成したいと思う」
俺以外の四人が一斉に拍手をした。彼らの好意はありがたいが、勝手に決められても困る。事の始まりは今朝のことだ。俺は地元の高校に通う学生である。あまり目立たない生徒で、毎日をなんとなく過ごしていた。そして学年がひとつあがって二年生になったとき、学校一の美女と呼ばれる彼女と同じクラスになった。才色兼備でまさに高嶺の花。人は彼女を尊敬の意味を込めて「マドンナ」と呼んでいる。そして俺は無謀にも彼女に恋をした。
しかしいきなり積極的に話しかけたわけではない。いや、お察しのとおりほとんど話したことがない。ただ遠くから見守っていたぐらいだ。
自分でも情けないと思うがこれが現実なのだ。彼女はとにかく多くの人間に慕われている。彼女の存在はあまりにまぶしかった。どうしようもないのだ。
春が終わって夏が来て、そしてとうとう秋になった。
そんなある日、季節恒例の席替えがあった。そしてよくあるドラマのように彼女が俺の隣の席になったのだ。ここからこの物語は始まる。
席替えの終わったその日の放課後、友人のBとCが俺のところに来るなりこう言った。「これは千載一遇のチャンスだぞ。ここでアプローチしなきゃお前という人間は終わりだ」
俺がマドンナを好きなことは友人たちは知っている。なかなか動き出さない俺にやきもきしていたのも彼らだった。
「で、でも無理だよ。俺自信ないしさ。ただ彼女と少し話せるだけで・・・」
「大馬鹿野郎っ。それでも人間か。まあお前のそういう性格はよく知ってる。だからこそ俺たちがいるじゃないか」
Bは運動神経が抜群である、Cもまた学力がトップクラスである。当然彼らはクラスの女子から憧れられていた。なぜ彼らが俺に構ってくれるか今でもわからない。
「Bのいうとおりだ。お前はもう少し自信を持ったほうがいい。俺たちも手伝うからさ。そうだ、告白方法を考えよう。全員でアイデアを出すんだ」
そのとき後ろから声がした。
「へえ、おもしろそうじゃん。俺たちも混ぜてよ」
同じクラスメートのDとEだ。なんか変なことになってないか。
「よし、このA以外の四人で一人ずつ提案していこう。それを順番に試していくんだ。告白方法提案の会とでも呼ぼうか」
「それ長すぎじゃね?でも楽しそうだな」
こうして物語は始まった。
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