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野良犬のキィオの涙は止まらなかった。
保健所に処分された、あの大きな赤い犬のアヴに何もしてやれなかった自分の無力さと、
アヴの飼い主に裏切られ、回りにも疎われた、その生きざまに。
「可哀想・・・可哀想・・・可哀想・・・可哀想・・・」
・・・自分も、実質的には野良犬なんだ・・・
・・・何時、自分もアヴさんのような目に逢うか解らないんだ・・・
・・・アヴさんは身を呈して、解ったよ・・・
・・・自分は、果たして『カラス』のままでいたら・・・
・・・いや、これは自分の自己責任・・・
・・・しかし、『カラス』のままでも人間に酷い目に逢うだろう・・・
・・・人間は、何て残酷なんだ・・・
・・・厚かましい奴を『排除』しなきゃ気が清まない奴等なのか・・・?
キィオは、大型トラックがひっきりなしに走っていく産業道路沿いを項垂れて歩いていた。
「ん?なんだこれ・・・」
キィオは、産業道路の道の真ん中に毛むくじゃらの肉片を見つけた。
「・・・!!!!!!!」
それは、キィオには見覚えのある野良犬の亡骸だった。
あの日、保健所に囚われたアヴを助けに行こうとするキィオを羽交い締めにした雑種の野良犬のサニの亡骸だったのだ。
産業道路を渡ろうとして、トラックに轢かれて死んだのだ。
その雑種のサニの亡骸の上を、何度も何度も何度も何度もひっきりなしに車が踏みつけ、どんどんと無惨な醜態をさらけ出していた。
「げえええええええーーーーー!!おえええええええええーーーー!!」
キィオは、思わず吐いてしまった。
キィオは、訳もなく狂ったように走り出した。
走った。
走った。
走った。
走った。
「はっ、はっ、はっ、はっ、」
気付けば、あの赤い大きな犬のアヴに初めて遭った十字路の近くの公園にいた。
キィオは、公園のうず高く山になった場所の頂に登った。
野良犬のキィオは、深く息を吸い込んみ、鼻を鉛色に淀んだ大空に突き上げ、
「うおおおおーーーーーん!!
うおおおおーーーーーん!!」
と、遠吠えした。
「うおおおおーーーーーん!!
うおおおおーーーーーん!!
うおおおおーーーーーん!!
うおおおおーーーーーん!!」
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