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「嫌あ!!気持ち悪い!!」
「汚ねえ!!じゃれつくな!!」
「うわーーーん!!服が汚れたーー!!」
「こいつまた襲ってきた!!」
「あっち行け!!しっ!!しっ!!」
赤い大きなセッター犬のアヴは、街の住民の人間達の嫌われものだった。
どんな人にもすぐにじゃれつき、顔を舐めまわし、ある者には恐怖さえ覚えていた。
アヴは、大型のセッター犬。
『犬嫌い』な相手を畏怖させる位の図体なので、それも無理も無かった。
いや、アヴは別に『襲う』つもりはなく、全くの誤解だった。
ただ、一緒に『遊びたい』・・・それだけだったのだ。
しかし、そんな願いも人間には通じる筈も無かった。
アヴは孤独だった。
アヴは悲しかった。
誰もが、アヴを虐げた。
誰もが、アヴを意味嫌った。
ある日のことだった。
野良犬のキィオは見てしまった。
「あっち行け!!」
「あっち行け!!」
あの赤い大きな犬が、数人の子供達に石を投げてつけて追っ払っている情景を。
「・・・な!!・・・な!!」
キィオは、身震いした。
「こ、このガキがあ!!」
わん!!わん!!ばうっー!!ばうっー!!
野良犬のキィオは、赤い大きな犬を痛め付ける子供達に吠えたて噛みつこうとした。
「このやろう!!」
「ひいっ!」
突然子供達の親が現れ、仰天したキィオはスタコラ逃げていった。
よたよたよたよたよた・・・
赤い大きなセッター犬は、子供に投げつけられた石がぶつかって出来た痣の痛みを感じながらも、よろけて歩いていた。
「ああ・・・面白かった・・・今度は何して遊ぼうかなあ・・・」
「すいません、この前は逃げちゃってすいません。いきなり抱きついてきたから・・・」
「あーーーっっっ!!逢いたかった!!!!」
大きなセッター犬のアヴは、ビーグル犬のキィオを見付けたとたん、目の色を変えてバッ!!と抱きつきてきた。
ぐきっ!!
「ぐっ!!」
「大丈夫?アヴさんとやら?」
「大丈夫、大丈夫。」
「『大丈夫』じゃないよ。人間にこんなに石をぶつけられて、何で逃げないの?」
「だってーーー遊んでたんだもーーーん!!」
・・・『遊んでた』・・・?!
キィオは絶句した。
「君、本当に『遊び』たかったんだね?」
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