3#悲しみの赤い大きな犬

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 「はっ!はっ!はっ!はっ!」  「はっ!はっ!はっ!はっ!」  2匹の野良犬はいつの間にか、トラックがひっきりなしに行き交う工場街の片隅に来ていた。  「あーー、面白かった!!」  「こんなに走り回るの久しぶりーーー!!」  「アヴさん、車道のど真ん中を駆けちゃ危ないよ。後ろで車の人間にどやされたでしょ?」  「めんごめんご!!でも、君もスーパーマーケットの中を通っちゃた時はまじ困っちゃったよ!!どっかに行っちゃったからねえ!!」  「ははっ!!そこに『肉』があったからつい・・・」  「君も食いしん坊だなーーー!!おいらは、ここの生ゴミ置場がお気に入りなのーーー!!期限切れの残飯がいっぱい!!」  「ほほおーー!!良いこと聞いた!ありがとう!アヴ!!」  「でも、ここの人間の店員がメッチャ怖くてさあ・・・」  大きなセッター犬のアヴとビーグル犬のキィオの2頭の野良犬は、トラックの排気ガスにまみれた薄汚れた歩道をお喋りしながら歩いていた。  「ここだよ。おいらを飼い主が車から降ろした場所。」  アヴは、潰れたパチンコ店の閑散とした人の気が無い駐車場へキィオを呼んだ。  「だだっ広いねえ、君と一緒にかけっこしようか?」  「うん。でも、ここはほら、ガラスの破片が飛び散ってたりして、脚の肉球を怪我しちゃったからかけっこには向いてないよ。  それにおいら、本当はここで飼い主を待ってなきゃいけないんだよな。  でも、ずーーーーーっと待っても、来ないの。  ずーーーーーっとずーーーーーっとずーーーーーーーーーーーっと!!!!!  そのうち、おいら暇すぎて「ちょっもだけいいだろう。飼い主も待ってくれるさ!」と、その場を離れてここの辺りを散歩してるの。  定期的に、ここを訪れて飼い主が来てるか調べてるんだけど、全然来てなくてさあ・・・」    キィオは言いたかった。  「君、それ飼い主に捨てられたんだよ!!」  と。  「おいら、実は『猟犬』だったの!!  鹿とかイノシシを獲る『猟犬』!!  飼い主はハンターやっててね、おいらが見つけた獲物を飼い主が銃でズドン!!と仕留めるの。  おいら、よく飼い主に『訓練』だと言ってゴムボールを投げてくれたんだけどねえ。  この場所に着いた時にも、飼い主が車からぽーーーーん!!と、愛用のゴムボールを投げてくれてね、取りに行ったらいつの間にか。
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