6637人が本棚に入れています
本棚に追加
/1056ページ
速水は麻衣子に参考書を返した。
「民法は難しいから、後からゆっくり勉強した方がいいと思うんだよな。
それより、さっき言った標準管理規約や区分所有法に目を通しておくと、電話でお客さんにいろいろ訊かれた時に、全く分からないまま応対せずに済むからな。
電話を取りながら覚えていくのもいいけど、せっかく勉強するなら、ここからやった方が、早くマンション管理の知識を増やせるだろ」
───なるほど。
「分かりました」
麻衣子は頷いた。
朝の空いた時間は、勉強の時間。
おしゃべりをするために一緒にいるわけではない。
速水もそれを意識していて、早めに勉強の話を持ち出してきたのかもしれない。
───訊きたかったけど……まあ、いっか。
ひとり暮らしを隠しているわけではないから、速水の耳に入っていてもおかしくはない。
誰から聞いたのかは、少し気になるけれど……。
「区分所有法は研修の時に少し勉強しなかった?」
「あ、はい。薄い冊子のようなものをもらいました」
「もう読んだ?」
「少しだけ……。もう一度読んでみます」
麻衣子は参考書を手に持ったまま、気を引きしめつつ、駅の方へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!