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神谷大輝は腕を伸ばし、ウォークインクローゼットにある一番上の棚から、大きな段ボールを取り下ろした。
もうひとつの小さな段ボールも下ろして上に重ね、大声を出す。
「母さん、 段ボール下ろした! 」
スリッパの音が聞こえてくる。
少し開いていたクローゼットのドアが全開になり、母のよし子が顔を出す。
「ありがとう。それ、リビングに運んでくれる?」
「……はいはい」
面倒くさそうに言って、ふたつの段ボールを持ち上げる。かなり重い。
バタン!
何かが倒れる音がした。
顔を上げると、段ボールをどかして空いたスペースに、隣に置いてあった本が倒れているのが見えた。
「……ん?」
大輝は一旦段ボールを床に置き、その本に手を伸ばした。
手に取ると、「えっ、なんで?」と呟く。
名古屋市立F中学校の卒業アルバム。
これは大輝のものではない。大輝は別の中学校に通っていたからだ。
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