第4章

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ー1ー 神谷大輝(かみやひろき)は腕を伸ばし、ウォークインクローゼットにある一番上の棚から、大きな段ボールを取り下ろした。 もうひとつの小さな段ボールも下ろして上に重ね、大声を出す。 「母さん、 段ボール下ろした! 」 スリッパの音が聞こえてくる。 少し開いていたクローゼットのドアが全開になり、母のよし子が顔を出す。 「ありがとう。それ、リビングに運んでくれる?」 「……はいはい」 面倒くさそうに言って、ふたつの段ボールを持ち上げる。かなり重い。 バタン! 何かが倒れる音がした。 顔を上げると、段ボールをどかして空いたスペースに、隣に置いてあった本が倒れているのが見えた。 「……ん?」 大輝は一旦段ボールを床に置き、その本に手を伸ばした。 手に取ると、「えっ、なんで?」と呟く。 名古屋市立F中学校の卒業アルバム。 これは大輝のものではない。大輝は別の中学校に通っていたからだ。
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