6661人が本棚に入れています
本棚に追加
目をぱちくりさせた。
「なに、今の」
冷めた口調で呟いてみるものの、頬はゆるむ。
両親を亡くし、愛情に飢えているのだろうか。
自分を気にかけてくれるような言葉が、嬉しかった。
───なんなの、もう。
にんまりしながらエレベーターを待っていると、
「お疲れさま」
女性の声が耳に入った。
慌てて後ろへ振り返る。
「あっ、お疲れさまです!」
黒田がクスクス笑いながら立っていた。
今朝会った時にはなかった、黒いフレームの眼鏡をかけている。
ひとりで笑う姿を見られたと思い、恥ずかしさから肩をすくめた。
彼女は言った。
最初のコメントを投稿しよう!