第1章

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だが、速水が引き継ぎに回ることで、3課の人たちにしわ寄せが及んでいるのも事実だ。 特に石田は、積極的に速水の仕事を引き受けてくれているため、ここ最近残業が増えている。 「いろいろ迷惑かけて、悪いな」 謝ると、石田は眉を寄せ、語気を強めた。 「悪いのは山本サンでしょ! 一哉はさ、何も気にすることないよ。それに、笹木ちゃんなら、仕事も早く覚えてくれそうだし、心配いらないって」 「……そうだな」 石田の優しい言葉に、感謝しながら頷いた。 すると、彼は嬉々として口を開いた。 「今日さ、一哉が笑うのを見て、嬉しかったんだ。楽しそうにしてるの、久しぶりだったから」 「…………」 気恥ずかしさから、顔を背けた。 自分でも意識していたため、直接言われると、照れくさい。
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