第1章

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麻衣子と話すと、自然と笑顔になる自分がいた。 感情がすぐ顔に出る彼女は、見ていて飽きないし、面白い。 思えば、子どもの頃もそうだった。麻衣子はよく泣き、よく怒り、よく笑う子だった。 そして速水は、そんな彼女と話したり、遊んだりするのを、いつも楽しみにしていた記憶がある。 今朝、駐輪場で麻衣子を見た時。 懐かしくて、嬉しくて、思わず満面に笑みを浮かべそうになった。 もっとも、彼女の方は自分を覚えていないだろうから、顔の筋肉に必死に力を入れて、笑みを殺した。 ニヤニヤした見知らぬ男が近づいて来たら、怪しまれると思ったからだ。 その結果、かなり不機嫌そうな顔になってしまったが、仕方がなかった。
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