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麻衣子に会うのは、13年ぶりだった。
先に再会した兄の真司から、事前に写真を見せてもらってはいたが、実際に目にすると、再び会えた喜びが、どっとわき上がってきた。
大人になった彼女は、昔とあまり変わっていなかった。
丸顔に大きな瞳、長いまつ毛、厚い唇。化粧をして女性らしくなってはいるが、昔の面影はしっかり残っていた。
かわいいな、と思った。
よく見ると、目元が真司とそっくりだった。
早く話をしたくて、だが、いざ声をかけようとしたら、何を言えばいいか分からなかった。
咄嗟に「そこ、俺の場所なんだけど」とか、「ゲン担ぎ」とか、妙なことを口走ってしまった。
───なにやってんだ、俺。
麻衣子はあからさまにこちらを警戒したが、正直なところ、淡い期待を抱いてもいた。
自分のことを思い出してくれたら。そんな気持ちが、僅かながらにあった。
「麻衣子は、一哉の顔も名前も覚えていないと思う」
真司からそう聞かされていたのに、麻衣子が全く気づかずツンケンした態度をとる度に、つい、意地悪なことを言ったり、からかったりしてしまった。
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