第1章

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まるで子どもだ。 案の定、麻衣子はかなり怒っていた。 見知らぬ男にしつこく絡まれ、困ってもいた。 ───見知らぬ男。 その響きが、速水を切ない気持ちにさせる。 実は俺、子どもの頃、何年か名古屋に住んでてさ。北区の○○グラウンドで野球やってて。 そう、おまえの兄さんもやってただろ? 知ってるよ、笹木真司。真司と同じチームだったんだ、俺。 麻衣子、真司の練習、よく観に来てただろ? で、練習が終わったあと、みんなでドロケイとか、いろ鬼とかしたの、覚えてねえ? 俺と俺の兄さんと、真司と麻衣子の4人で、かくれんぼして遊んだりもしたよな。 そうそう、俺、あの時の“いっちゃん”。おまえ、俺のことずっと、“いっちゃん”て呼んでただろ。
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