6661人が本棚に入れています
本棚に追加
パソコンを見ていた石田が、心配そうな顔を向けた。
「大丈夫? 引き継ぎに手がかかるから、大変だろ。もっとこっちに仕事回しなよ」
言い終わるやいなや、椅子から腰を浮かせ、速水のそばへやって来る。
「あー、ほら。こんなの家に持って帰らない」
速水がバッグへ入れようとした書類を、石田は素早く奪い取った。
「おい」
「いーのいーの。俺がやっておくから」
「おまえだって、仕事たまってんだろ」
「あのさ、俺、一哉と違って、できる男だから」
石田は書類のない方の手を腰に当て、ぐいと胸を張った。その姿に、ふ、と笑みがこぼれる。
「……悪いな」
「なにそれ。もっと俺を頼ってよ。同期だろ? ねえ、他にもなんか持ち帰ろうとしてないよね」
そう言って速水のバッグの中を覗きこんだ石田は、ふとある一点に目を止めた。
「これなに?」
浅い内ポケットから、黄色い2本の足がぴょこっと出ている。
最初のコメントを投稿しよう!