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ー7ー
エレベーターホールからトイレと更衣室の前を通り、その奥にある休憩室へやって来た。
黒田は電気をつけて、麻衣子に「座って」と促した。
部屋には2台の自動販売機と、長方形の白い大きなテーブルが置かれていた。
椅子は10脚ほどで、部屋の奥には布製のソファーとサイドテーブルもある。
麻衣子はいちばん手前の椅子を引き、ゆっくりと腰を沈めた。
黒田がその向かい側に座る。
静かな空間で向かい合うと、就職活動中の面接を思い出した。
相手が面接官なら、麻衣子を気に入らなければ採用せずにそのまま終わる。
しかし、黒田は課は違うとはいえ、これからずっと顔を合わせて仕事をしていく上司。
下手なことを言って嫌われてはいけないと、妙な緊張感に包まれる。
就職が決まってから、女性誌で「会社でお局様にいじめられた」という類いの体験談を目にする度に不安を抱いていた麻衣子は、膝の上でぐっと手を握りしめ、背筋をピンと伸ばした。
いやしかし、果たして黒田はお局様に当てはまるのか。
───というか、そもそもお局様って……どんな人?
などと、今は確実に必要のない思考をめぐらしていると、
「笹木さんが来てくれて、本当に良かったわ」
開口一番、彼女はそう言った。
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