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「……えっ?」
余計なことを考えていたばかりに、反応が遅れ、しかも間の抜けた声を出してしまった。
しまった、いきなりしくじったと肝を冷やしたが、幸い黒田は気にする様子もなく、すぐに先を続けた。
「だってね、今日はみんなニコニコしてたけど、ここ1年くらい……つまり山本さんが来てから、3課はもうピリピリだったもの」
ピリピリ?
麻衣子は首を傾げた。
今日の3課は忙しそうではあったが、黒田が言うように終始なごやかな雰囲気だっただけに、その状況を想像するのは難しかった。
山本が来てからそんな空気になったということは、彼女に何か原因があったのだろうか。
「それは、どうしてですか?」
麻衣子が訊くと、一瞬黒田の目がキラリと光ったような気がした。
彼女はテーブルの上に両肘を乗せ、身を乗り出した。
そして、部屋にはふたり以外は誰もいないのに、わざわざ声をひそめて言った。
「実はね、速水くんと山本さん、昔付き合ってたみたいでね、偶然この会社で再会しちゃったらしいのよ」
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