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「もともと彼女、新入社員───笹木さんが来て引継ぎするまでの契約だったから、残りあと1ヶ月くらいでしょ? どんなにつらくても、社会人なんだから、契約期間はしっかり働いてくれなくちゃ困るわよ」
気のせいかもしれないが、暗に「あなたも社会人としての自覚を持ちなさいよ」と言われたような気がして、ドキッとした。
動揺を隠すように、質問を投げる。
「あの、ええと……山本さん、いつ頃お辞めになったんですか?」
「先月の終わりくらいね。連絡もなしに来なくなったから、3課の人たちはもう大変。うちにも派遣会社にも迷惑かけて……ひどいものよ」
話すうちに腹が立ってきたのか、黒田は語調を強めた。
「いろいろ面倒見てあげたのに裏切るなんて、失礼しちゃうわ。いい子だと思ってたのに……。まあ、もともと期間限定の子だったし、もうどうでもいいけど。こっちも忘れるしかないわね」
「……期間限定?」麻衣子は訊き返した。
黒田が頷く。
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