6651人が本棚に入れています
本棚に追加
/1056ページ
急いで駆け寄り、そのいくつかを拾い上げた。
指でつまんで確認すると、それが細かく破られた写真であるのが分かった。しかし、誰が写っているかは全く分からない。
「お母さーん、これ、誰の写真ー?」
空に向かって問いかけた途端、母は悲しそうに顔を歪めた。そして、何度もパクパクと口を開く。
「聞こえないよ! ねえ、これ、なんなの?」
麻衣子の声は、空に届いているのだろうか。
母は申し訳なさそうに首を垂れ、顔の前で両手を合わせた。
「どうしたの? 謝ってるの?」
母は何か言いたげに麻衣子を見つめた。が、目を閉じ顔を背けると、そのまま雲に隠れて見えなくなった。
「お母さん、待って!」
麻衣子は声を張り上げた。
空気が抜ける風船のように、雲がみるみるうちに小さくなっていく。
「おかあさん!!」
もう一度、大声で母を呼んだ。
その時───、
ジリリリリリ!!
───目を覚ました。
最初のコメントを投稿しよう!