第2章

7/33
前へ
/1056ページ
次へ
「今さらいろいろ言っても仕方ないけど、戻りたくなったらいつでも戻って来いよ。俺は今も、麻衣子と一緒に住みたいと思ってるから」 「……うん」 なんとか声を絞り出した。 兄と一緒にいたいのは、むしろ麻衣子の方だった。 でも、甘え過ぎてはいけないのだ。 彼は妹のために、自分を犠牲にしてしまう人だから。 憂鬱になりかけたため、麻衣子は話題を変えようとした。ところが、先に話を逸らしたのは真司だった。 「そういえば、自転車にキーホルダーは付けた?」 真司からもらった猫のキーホルダーを思い出す。 駅まで自転車で通うと話したところ、わざわざ麻衣子のために買ってきてくれたのだ。 「うん、付けたよ。あれ、すごく光るね」 麻衣子は明るい調子で答えた。 「だろ? 目印になるから、無くすなよ」 「うん」 それから数分、会社の話などをしてから、電話を切った。
/1056ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6660人が本棚に入れています
本棚に追加