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「今さらいろいろ言っても仕方ないけど、戻りたくなったらいつでも戻って来いよ。俺は今も、麻衣子と一緒に住みたいと思ってるから」
「……うん」
なんとか声を絞り出した。
兄と一緒にいたいのは、むしろ麻衣子の方だった。
でも、甘え過ぎてはいけないのだ。
彼は妹のために、自分を犠牲にしてしまう人だから。
憂鬱になりかけたため、麻衣子は話題を変えようとした。ところが、先に話を逸らしたのは真司だった。
「そういえば、自転車にキーホルダーは付けた?」
真司からもらった猫のキーホルダーを思い出す。
駅まで自転車で通うと話したところ、わざわざ麻衣子のために買ってきてくれたのだ。
「うん、付けたよ。あれ、すごく光るね」
麻衣子は明るい調子で答えた。
「だろ? 目印になるから、無くすなよ」
「うん」
それから数分、会社の話などをしてから、電話を切った。
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