第2章

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ー2ー 身支度を終えて玄関を出ると、外は暖かかった。 空は雲に覆われているものの、降水確率は午前、午後ともに10パーセント。今日も自転車で行けそうだ。 昨日より5分ほど早く出たが、朝食は既に済ませていた。 毎日外で食べれば出費がかさむし、運悪く速水に出くわしても、一緒に行動するのを断る理由になると思ったからだ。 出勤前の貴重な時間を、速水に振り回されながら過ごすのはいやだった。 ───どうか、速水さんには会いませんように。 そう祈りながら、マンションの自転置き場へと歩いて行く。 戸数が少ないので台数も多くはないが、 場所が狭くいつも隙間なく置かれているため、出し入れがしにくい。 隣の自転車を可能なかぎり動かし、体を入れて鍵を挿し込む。 両手でハンドルを握り、スタンドを上げてそろそろと後ろへ下がった時、ふと、一番端に停めてある自転車が目に入った。 ───あれ? 麻衣子はまじまじとそれを見つめた。
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