第2章

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コーヒーをテーブルの上に置き、麻衣子はバッグから参考書を取り出した。 今日から管理業務主任者の勉強を始めることにしたのだ。 管理組合に対して、管理委託契約に関する重要事項の説明をする際に必要な資格らしいが、それを実際に行うフロントは取得を奨励されているものの、事務は特に勧められてはいない。 この参考書も、研修中、同期の美羽が仏頂面で買うのを見て、どんなものかと興味本意で一緒に購入したものだった。 会社へ行くまでの空き時間に何をしようと考えた時、買ったまま放置されていた分厚い本の存在を思い出した。 難しい内容でも、じっくり読めば少しは理解できるかもしれない。 そう思い、ページを開いてみたが───。 「さっぱり分かんない」 ……前途多難だ。 早くも匙を投げたくなったところで、スマートフォンが短い音を立てた。 友だちの「ピンポーン」のおかげで宿題の後回しを親に許してもらえた小学生のように、麻衣子はいそいそとバッグの中に手を突っ込んだ。 画面を開くと、真司からメールが届いていた。
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