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「今どこにいる? 電車には乗れた?」
昨日のこの時間は何も訊いてこなかったのに、今日は心配になったのだろうか。
そういえば、母もよくこんなメールを送ってくれたな、と思い出す。
それがどんなに幸せなことかも解らず、煩わしく思っていた当時の自分が情けない。
麻衣子はすぐに返信した。
「まだ乗ってないよ。今、コンビニでコーヒー飲んでる」
きっと安心したのだろう、少し待ったが返事がないため、麻衣子はスマートフォンをバッグに戻した。
再び参考書を開き、理解できないまま読み進める。「瑕疵」「心裡留保」「諾成契約」。残念ながら、漢字すら読めない。
頭を抱えながら、数分が経った頃だった。
隣の椅子に、誰かがドカリと腰を下ろした。椅子の足が、ギシッと苦しそうな音を出す。
他にもたくさん空いているのに、わざわざすぐ隣の席に座る人。
そんな人物は限られていると思った。
───なんなの、もう。
うんざりした面持ちで首を動かした麻衣子だったが、相手を見た瞬間、大きく目を見開いた。
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