第2章

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知らない顔が、そこにはあった。 日に焼けた肌に、ライトブラウンの肩まで伸びた髪。 紫色のTシャツの上に白のパーカーを着た男が、体を横に向け、至近距離で麻衣子を見ていた。 ぎょっとして、麻衣子は壁に体を寄せて距離を取った。 年は同じくらいだろうか。 服装やヘアスタイルを見るかぎりでは、学生のような印象を受ける。 「なんですか……?」 警戒心を滲ませながら尋ねたが、相手は構わず、歯を見せてニッと笑った。 目尻に深い笑いジワができる。それを見て、年齢はもう少し上かもしれないと思った。 「なにやってんの?」 男は麻衣子の椅子の背もたれを掴み、もう片方の手で素早く参考書を持ち上げた。 「えっ、あの……」 「こんなところで、朝から勉強?」 彼はやや驚いた口調で尋ねた。コンビニで勉強をする人は珍しいのだろうか。 しかしこちらの答えは待たず、パラパラと参考書をめくりながら、質問を重ねる。 「もしかして法学部?」 ───ああそうか。 麻衣子は自分の服に目を落とした。
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