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「もう諦めなよ。誰も助けてくれないんだから」
失望させるような言葉を吐かれ、麻衣子はピタリと動きを止めた。
この人は、経験からそう言っているのではないだろうか───。
彼の自信たっぷりな様子を見て、麻衣子はそんな思いを抱いた。
───なに期待してんの? 気づいても、みんな見て見ぬふりするに決まってんじゃん───
あとに続く言葉が頭を過り、じわりじわりと胸が締めつけられていく。
彼はにやりと笑った。
「観念したんだ?」
言いながら、今度は腰のあたりへ手を滑らせてくる。
反射的に、麻衣子は思い切り肘を突き出した。
ドンと胸に当たったが、無駄だった。
あっという間に強い力で腕を掴まれ、強引に男の方へ引き寄せられる。
「悪あがきすんなよ」
怒気を含んだ声が鼓膜を震わせ、背筋が凍りついた。
───いやだ、いやだ!
叫びたいのに、声が出ない。
抵抗しようとしても、力ではかなわない。
絶望的な状況に、だんだん視界が滲んでくる。
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