第1章

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 肌寒く成りはじめた紅葉の季節。  学生の俺は、いつもと変わらない時間を過ごしていた。 犬「ワン!(我に付いて参れ)」 A「も~待ってよ“たけし君”」 B「ッ! ………………」  木島武(きじまたけし)十六歳。  自分の名前を呼ばれたと思い、ふと後ろを振り返ってみると犬の散歩をしている女子高生の姿が。  何だ自分と同じ名前の犬か、と勘違いしてしまった。   B(あれ? この子、どこかで見た事あるような……あ、中学の時に三年同じクラスになって、席が何度か隣になった北野雪路さんだ……)  ふと、中学の時の思い出が脳裏に浮かび上がってくる。  北野さんが、つい落としてしまった消しゴムを拾ってあげた時に「ありがとう。たけし君」と笑顔でお礼を言ってきたことを思い出す。  あぁ、北野さんって結構可愛いよな~。 (ちょっと待てよ……何故、“愛犬”に“俺の名前”を付けているんだ……? まさか……北野さんは、俺の事が……好き“だった”? ちょーっと待て、何故過去形だ? 好きなのかで良いじゃないか……そう、北野さんは俺の事が好き――え、マジ? 北野さんは、俺の女……ドードー待て俺、落ち着け俺、北野さんは俺の女じゃない、“まだ”。そうそう、まだきた、いや、雪路は俺の女じゃない。なら、いつなるんだ? ……今でしょ! よっしゃぁぁ!! 盛り上がってきました。この北島武。これから、北野雪路さんに告白します!!)  と、北野が歩いて行った方を振り返ってみると……秋風が吹いていた。 (ちょっと、待て、告白するっつっても、何て言えば……)  完 ※北野雪路さんは、木島武君の事を中学の時は犬としか見ていなかった事は内緒でお願いします(笑)
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