速やかに任務を遂行すべし

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―― ――― ビーカーや三角フラスコ、作業台の上には化学室でおなじみの実験器具が無造作に置かれていた。 分液漏斗を激しく振盪させると小さな渦が浮き上がる。しゅるしゅると液体が完全に分離するのを待ってから、スウ先生は慎重に上層部の液体だけを取り除く。 ステンレス製の試験管立てに並んだ、5本の試験管、――。 そこにさっきの液体を少量ずつピペットで流し入れ、薬さじに乗せられた白い結晶をそれぞれに落とすと、鮮やかに発光する液体が完成した。 「うわ、綺麗……」 駄菓子屋で売っているあの粉末ジュースを溶かしたような、グレープ、いちご、レモン、ソーダ、メロン色の液体。 ジュースだと言われたら、誰だって簡単に信じて飲み干してしまうだろう。 「珊瑚、覚悟はできたかしら」 小さな気泡がしゅわしゅわと弾けて浮かぶそれを、スウ先生は嬉しそうに僕の目の前に差し出した。 「どの色にする??」 「…えっと」 ベイビーブルーに煌めくソーダ色の液体は、爽やかで美味しそうだ。 「やっぱ、ここは青かな」 ごくりと喉を鳴らし手を伸ばした僕に 「駄目ッ、珊瑚はやっぱり赤だよ」 ダークグレーのグラサル天板の上をケイファが慌てて駆け寄ってくる。
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