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「お前にいい事を教えてあげよう。毎年、一月十六日の真夜中。決して誰にも見られずに、屋根の上に登り……」
例の昔話を自分の姿は現さずに彼女の耳元で囁く。
実際に行動に移す、移さないは別として。
こうやって人々の心の弱さにつけ込めば、そのうち誰か一人ぐらいは実行するであろう。
大体。
死ぬのが怖いって?
クックック……。
俺は、そうは思わないな。
ベランダの女には届かない程の小さな声で呟いた。
「今度は俺が解放される番だ」
凛と澄みきった空気に放たれたのは、禍々しい呪いの連鎖する音であった。
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