死を知る満ちる

45/45
59人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
「お前にいい事を教えてあげよう。毎年、一月十六日の真夜中。決して誰にも見られずに、屋根の上に登り……」  例の昔話を自分の姿は現さずに彼女の耳元で囁く。  実際に行動に移す、移さないは別として。  こうやって人々の心の弱さにつけ込めば、そのうち誰か一人ぐらいは実行するであろう。  大体。  死ぬのが怖いって?  クックック……。  俺は、そうは思わないな。  ベランダの女には届かない程の小さな声で呟いた。 「今度は俺が解放される番だ」  凛と澄みきった空気に放たれたのは、禍々しい呪いの連鎖する音であった。    
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!