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LINEでメッセージが来て降りていくと、白い大きなセダン車が止まっていて、中から詩乃が手を振っていた。
なんか、ちょっと残念な気がしたのは何故だろう。
わたしは、ありがとうございます、と言って後ろのドアを開けた。
新しい車の匂いがした。
なんか、これ、見慣れない車だけど、外車?
「藍沢さん、お呼び立てして申し訳ない」
北島が妙に大人なことを言った。
いや、立派な大人だった。
これで普通か。
「いえ、こちらこそ迎えに来てもらって・・・」
来てもらって・・・なんだろう。
すみません?ありがとう?その前に迎えに来て頂いて?
丁寧な言葉遣いって難しい。
「いえいえ、とんでもない。
それにどっちにしてもお昼御飯に出かけるわけですし?」
北島はナビを手馴れた感じで操作して、メモリーされていた何処かを呼び出した。
「中華、でいいですかね?おしゃれな感じじゃないんですけど」
わたしは頷いた。
何処に行きたいか、なんて聞かれても答えられない。
店なんか知るわけも無いし。
「シュンイチ、ラーメン好きだよねえ」
詩乃が呆れたようにぼそぼそと言った。
「北島さん、ラーメン好きなんですか?わたしも好きです」
片手でハンドルを握りながら、北島は頷いた。
「出てくるの早いですしね」
北島は苦笑して、こちらをちらっとミラー越しに見た。
目が合って、何か妙にドキッとする。
「味は、よくわからないんですけどね。
味覚は人より劣っているらしくって。
藍沢さんは、何系のラーメンが好きなんです?
こってり派ですか?薄味さっぱり派?」
わたしは、最近食べたラーメンを必死で思い出す。
なんだったかな。
「こってり、かな」
「いいですよね、こってり。
さっぱり系がいいと言われても、なんか物足りないんですよ。
食べたーっていう実感があります、こってりは」
そういう北島はスマートな体型のさっぱりした髪型の医者だ。
なんだか妙に似合わなくて面白い。
わたしはなにがおかしいのかよくわからなかったけれど、いつの間にか笑っていた。
まあ、いいんじゃないかな。
そういう年頃だし。
北島は満足そうに頷いた。
詩乃が前の席から振り向いた。
「沙織、あんまり気を使わなくていいからね。シュンイチ、本当は緊張しているんだよ。本当は女子が苦手なんだから」
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