<U10>

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少しかび臭い室内は、 和代にとっては 馴染んだ世界のような 気がした。 祖母の離れで、 そこでいつも本を読んで 過ごしていた自分。 嫌な気分を払うように 携帯を取り出したが、 ここはもっとも電波が 入りにくい場所だった。 和代は諦めて 椅子に深く腰掛けた。 “この頃、 浮かれていたからかな。 結婚話なんかされちゃって、 いい気になるなって事かな。 そうだよな、こんな私に そんないい話が あるはずもないか。 きっと夢だったのかも。 この暗がりが 現実なのかもしれない“
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