<U11>

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誰にも見せた事のない 傷を曝したことで 少しは気が 楽になって来た。 川島の脳裏に 遠山の言葉が 思い出された。 自分を 大事にすることを 知らない。 他人の裏切りに、 おそらく 自分以上に深く傷ついて いるのだろうと思った。 だが、そうは思っても 心の傷は誰にも癒す事が 出来ない事も判っていた。 幼少からの記憶が 支配している 和代ならば尚の事、 受け入れないだろう。 仕事の手際はいいのに、 自分の事には 全くダメなのが なぜかおかしく感じられ、 普段は 表情を変えない和代に 何処か子供っぽい姿を 見た気がして 笑いを堪えるように 川島は言った。
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